Highway of Night (Act.14)

 やけに機嫌が良い少女は今日も独りで首都高をうろつく。このゲンバラ社の白きCarrera GTに乗りながら。
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婚約者だった成志は先程自ら起こした単独事故で細かいところまで神経質なパパからの信用を失い、結婚の約束は抹消され、関わらなければならない理由も無くなった。その事をついさっきスマホの通話で聞かされ、途端にスッキリ爽快な気分で溢れた。そんなハイテンションの勢いでアクセルを強く踏み、湾岸線に合流する。スピードメーターは200キロを越していることを示している。一般車両のインサイトやカイエンがシケインと化す。迫るとS字にそって避ける。
 一方、ケイとマイは一休みし終って出発していた。再び大井PAの出口から湾岸線に合流する時、1台の車が後ろからものすごいスピードで走ってくる。

マイ:あれ速くない!?
ケイ:なんだ?あれわ・・・車種わ・・・。

その車わ合流したばかりで90キロで走るインプレッサを、まるでカラーコーンを避けるかのように車線変更で避ける。そして、そのまま追い越す。

ケイ:カレラGTだわ。しかもゲンバラ・・・。
マイ:まぢで!?

少女は青と黒のツートンカラーのインプレッサに見覚えがあった。

少女:あれって・・・。

成志とのきもいデートの時にバトルして逃げ切った、あのインプレッサだと確信した。気付くとアクセルを緩め、ブレーキを踏んだり、緩めたり、踏んだりを繰り返して減速する。するとインプレッサとの距離が縮まっていく。

ケイ:ん?カレラが減速してる?
マイ:え?
ケイ:テールライトが点滅してるんだけど。
マイ:ア・イ・シ・テ・ルのサインぢゃない?
ケイ:ドリカムかよ笑笑
マイ:でも、これ、このインプに意識してるのかなー。
ケイ:まーそれわあるかも。パッシングしてみる?
マイ:したらー?

ケイはパッシングを試みる。少女はパッシングされるとアクセルを再び踏む。

ケイ:あ、やる気だわ。

ケイもカレラを追う。パッシングは走り屋の世界では喧嘩売るのと同じ。バトルの始まりだ。

マイ:このインプわ550馬力だっけ?
ケイ:そーだけど。
マイ:うーん、カレラGTって612馬力なんだよね・・・で、ゲンバラだから・・・
ケイ:詳しいぢゃん
マイ:NEED FOR SPEEDで出てた

少女はインプレッサの様子を見る。どのくらいのパワーがあるのかを試しているのだ。

少女:並みのインプよりはパワーがあるかな・・・よく加速する。

甘い目で見ていたその時、無駄にアクセルを緩めていた為にインプレッサに抜かれた。

少女:あ!しまったー。油断した。

そう呟きながら下を向いた。その時に窓越しに視線を感じた。インプレッサに乗る2人の男女がこちらを見ていたのだ。

マイ:意外ー。女の子ぢゃん。
ケイ:おう、しかも可愛いー♡
マイ:・・・ケイ。

マイはケイを死んだゴキちゃんを見るような目で見つめた。

ケイ:だって可愛いぢゃん。
マイ:・・・ケイのバカッ!!

ーつづくー