Highway of Night (Act.16)

 しばらく待つとレッカー車が来た。レッカー車からはスキンヘッドにバンダナを巻いた男が降りてきた。

ケイ:あ、小林先輩。
マイ:久しぶりです。
小林:よう、久しぶり。金髪にしたんだな。
ケイ:はい。
小林:にしても、このカレラGT・・・ヒドイな。それに早いところ片付けないとサツ来るしな。お前らも手伝え。
ケイ:うす。
マイ:了解。

ケイはカレラGTのフロントバンパーにレッカー車のワイヤーを引っ掛け、荷台の上に乗るマイはワイヤーを巻き上げる装置を起動させる。するとカレラGTはレッカー車の荷台に載った。二階堂優香はただそれを見つめて、小林はその作業工程を二階堂優香の横で監督していた。

二階堂優香:料金はおいくらかしら。
小林:同じ走り屋同士の仲間だろ!仲間は助け合うものだからな!
二階堂優香:・・・愉快ね。
ケイ:載せ終わった!
マイ:ぢゃーあとは移動だね!
小林:行くか!

小林はレッカー車を発信させ、ケイとマイと二階堂優香が乗るインプレッサも続いて後を追う。

二階堂優香:どこへ行くの?
ケイ:小林先輩の工場。
マイ:なんでこんな奴がケイのインプに乗るの?
二階堂優香:仕方ないからよ。それ以外に何かあるかしら。
マイ:なに?ナニナニかしらーとか言うの。お嬢様気取り?ウケるんですけど笑笑
二階堂優香:実際お嬢様ですが、何か。貧乏な田舎のヤンキーは可哀相ね。
ケイ:俺のインプで騒ぐんぢゃねーよ!騒ぐならこっから蹴り落とすぞ!コラァ!!

ついにケイまでキレた。この一言で2人の喧嘩は収まった。

10分くらい走っていると小林の自動車整備工場に着く。小林はガレージに荷台に載せていたカレラGTを降ろし、インプレッサは工場の駐車場に停まる。ケイとマイと二階堂優香の3人は降りてガレージの方へ行く。ガレージはそこら辺のコンビニの建物がすっぽり入る程広く、整備工場なだけに工具やパーツも揃えてあり、カレラGTの他に赤のR34やオレンジのJZA80がボンネットを開けたまま停まっていた。

小林:こりゃ直せねーわ。ボディは完全に大破してるし、ラジエーターも爆発してるが、エンジンもダメージがある。直す事は出来るが、新しく車買った方が安い。これは廃車だな。
ケイ:まぢか。高いのに。
マイ:ワーザンネン(ざまぁ笑笑)
二階堂優香:・・・。

二階堂優香は目が泣きそうだった。拳も握りしめて下を向いている。これにはかなりの愛着があったようだ。

マイ:・・・。

流石にマイもこれには何も言えない。

ケイ:なんとかなんねーの?
小林:直そうとするとエンジンは元の性能が蘇らないかもしれないし、ボディも歪んでるし、だからコストもすごく掛かる。
二階堂優香:・・・いいわ。もういいよ、廃車でいい・・・ありがとう。いい勉強になったわ。
ケイ:・・・新しい車探そーぜ。
二階堂優香:・・・は?
ケイ:例えば、このエンジン直して、ポンコツ屋とか中古車屋とかから車を探して移植するとかさ。
二階堂優香:いいセンスしてるわね。

二階堂優香は初めて笑顔を見せた。

ケイ:俺も探すの協力してやるし、先輩も協力しますよね?
小林:そうだ!俺は改造屋だからな。
ケイ:明日にでもベース探してに行こーぜ。
二階堂優香:貴方と2人で?
マイ:え?
ケイ:まー俺も暇だし。
二階堂優香:本当にお人好しなのね。
マイ:ケイ!うちも行くよ!
ケイ:オメェも?いいけど・・・。
マイ:2人きりなんて許せないから!
ケイ:ぢゃー3人で探すって事で決まりな。

ーつづくー